代表からのご挨拶

代表からのご挨拶 全国児童青年精神科医療施設協議会   代表  山崎 透

全国児童青年精神科医療施設協議会(以下全児協)は、我が国で唯一の、児童青年精神科の入院治療施設を有する医療機関で構成される団体です。

「全児協の歩み」に記載されているように、全児協(当時は全児研)は1971年に設立されました。私自身は第21回研修会の三次大会から参加させていただいておりますが、当時の加盟施設数は正会員施設13施設、参加人数は168名でした。平成27年4月1日現在で、正会員施設は26施設と増加しており、研修会の参加人数は300名以上となっています。つまり、この約四半世紀で倍増したことになります。

こうした加盟施設の増加、すなわち児童青年精神科病棟・病床を有する医療機関の増加には、複雑化・深刻化を増す子どものこころの問題に対する児童青年精神科医療へのニーズの増大、各自治体および医療機関における児童青年精神科医療体制整備の必要性に対する認識の高まり、児童・思春期精神科入院医療管理料の新設など、様々な要因が関与していると考えられます。

このように、児童精神科医療の中核的な役割を担う医療機関が増えていくこと自体は、地域医療の面からも、人材育成の面からも、とても喜ばしいことです。今は、いわば、児童青年精神科領域には追い風が吹いている状況と言えます。しかし、児童青年期精神科の入院治療に関わる私たちが、日々研鑽を重ね適切な病棟運営や情報発信を継続していかなければ、フォローの風は瞬く間にアゲインストに変わってしまいます。今後は児童青年精神科医療の質が問われる時代になることは間違いありません。したがって、施設基準の遵守はもちろんのこと、良質な医療を提供するために、これまで以上に精進していくことが求められています。

今後、全児協として以下のようなことに取り組み、これまで以上に我が国の児童青年精神科医療の発展や、地域の子どもの精神保健ネットワークの構築に貢献していかなければならないと考えております。

みなさまのご理解とご協力をお願い申し上げます。

■児童青年精神科の入院治療における質の向上

毎年開催される研修会での発表や意見交換は、研鑚の場として今後も重要な位置を占めていることは言うまでもありません。また、平成25年から開催している診療報酬や精神保健福祉法に関する研修会も充実させていきたいと考えています。さらに、今後は、児童青年精神科病棟に特化した臨床指標の作成などにも取り組んでいければと考えています。

■人材育成システム、研修機能の強化

一般精神科・身体診療科を問わず、臨床研修の第一歩は、入院患者の担当医となって上級医の指導を受けながら診断や治療について学ぶのが常識です。しかし、児童青年精神科領域では、専門に入院治療をおこなえる医療機関が極めて少ないことから、入院治療の研修の機会がなかなか得られないのが現状です。したがって、全児協の加盟施設は、この領域を志す臨床医を育成するという、重要な役割を担っているといえます。

また、みなさまもご存じのように、日本専門医機構が発足し、これまで各学会がおこなってきた専門医の認定システムが一本化される方向になっています。サブスペシャリティとしての子どものこころの領域は、精神科系、小児科系に複数の学会が存在するため、「子どもの心の専門医」として統合する方向で協議が進められています。このシステムが動き出す際には、全児協の加盟施設の多くが研修施設として機能することを求められます。そのためにも、施設間で協力し合いながら、より優れた研修プログラムを整備していくことが急務となっています。

■児童青年精神科病棟整備の必要性についての啓発活動

上述しましたように、児童青年精神科専門病棟・専用病床を有する医療機関の数は、年々増加していますが、その一方でこうした医療機関が一つも整備されていない都道府県が数多く存在するのもまた現実です。重篤な精神障害を持つ子どもの入院治療が可能な児童青年精神科医療の中核病院の整備は、児童精神科医療の充実のみならず、子どもの精神保健ネットワークの展開や人材育成の観点からも極めて重要です。したがって、今後は、関係機関と協力しながら、各都道府県に少なくとも一つは児童青年精神科専門病棟・専用病床を有する医療機関が整備されていくよう働きかけていくことは、今後全児協の重要なミッションの一つであると考えています。

■関係機関との連携モデルの提示

子どもの情緒や行動の問題は、医療だけで解決するものではないことは言うまでもありませんし、医療に限定しても、全児協の加盟施設だけで地域の医療をカバーできるはずもありません。現在は、それぞれの加盟施設が地域の実情に合わせながら、医療連携や関係機関とのネットワークを構築していることと思います。しかし、第45回研修会でも議論されたように、マンパワーやリソースの不足、それぞれの多忙さなどから連携に苦労していることが明らかになりました。今後は、それぞれの加盟施設が工夫していることなどについて情報交換しながら、児童青年精神科専門病棟・専用病床を有する医療機関を中核の一つとした、児童青年精神科領域における医療連携・子どもの精神保健ネットワークのあり方を提示していければと考えております。

■人材確保・加盟施設間の相互交流の促進

今回のホームページ開設もその一つですが、年1回の研修会だけではなく、加盟施設間の交流を促進していくことも大切だと考えております。

人材確保の観点からは、例えば、ある加盟施設で研修を終えようとしている若手の医師が、この領域でさらに仕事をしたいと考えた時に、全児協のホームページの募集案内を見ていただくことで、この領域に留まる医師を少しでも増やすことに貢献できることが期待されます。また、他の職種でも人事異動などでこの領域を離れざるを得なくなった時に、他の加盟施設の募集案内を見る機会にもなります。

また、コメディカルの方々からは、研修会の度に「年1回の職種別懇談会だけでは時間が足りない。もっと同職種で意見交換する場が欲しい」というお話をいただきます。今後は、希望があれば、職種別の交流会・研修会の開催なども検討していきたいと考えています。

■関係団体との連携の強化

児童青年精神科医療の発展のためには、日本児童青年精神医学会をはじめとした関係団体との連携が欠かせません。今後、関係団体との連携を強化しながら、診療報酬改定や災害時の支援活動への取り組み、精神保健福祉法の見直しに向けての提言など、様々な課題に積極的に取り組んでいきたいと考えています。