全児協が果たすべき6つの役割 全国児童青年精神科医療施設協議会 代表 原田 謙
全国児童青年精神科医療施設協議会(以下全児協)は、我が国で唯一の、児童青年精神科の入院治療施設を有する医療機関で構成される団体です。
「全児協の歩み」に記載されているように、全児協(当時は全児研)は1971年に設立されました。発足当初の加盟は6施設、参加人数は54名でした。それが、令和4年1月1日現在で、正会員施設は37施設、オブザーバー施設は17施設。研修会には500名前後の参加があります。
こうした児童青年精神科病棟・病床を有する医療機関の増加には、複雑化・深刻化する子どものこころの問題に対する医療へのニーズの増大、各自治体および医療機関における児童青年精神科医療体制整備の必要性に対する認識の高まり、児童・思春期精神科入院医療管理料の新設などの要因が関与していると考えられます。 今後、全児協としては、これまで以上に我が国の児童青年精神科医療の発展や、地域の子どもの精神保健ネットワークの構築に貢献していかなければならないと考えております。みなさまのご理解とご協力をお願い申し上げます。
1.児童青年精神科治療における質の向上
毎年開催される研修会での発表や意見交換は、加盟施設がお互いの診療状況や取り組みを知ることで、自分たちの治療の更なる向上を実現するために重要な位置を占めています。これに加え、平成25年から開催している診療報酬や精神保健福祉法に関する研修会、各機関の統計データの視覚化、そして多職種が独自に企画する研修会などを行います。
2.人材育成システム、研修機能の強化
日本専門医機構が「子どものこころ専門医」を推し進めています。全児協加盟施設は、子どものこころの入院治療を学べる格好の場であります。しかも、単なる資格の取得だけでなく、真に子どものこころの臨床に習熟した医師を育成するという、重要な役割を担っています。各施設は各地域における子どものこころ専門医研修施設群の中核となり、入院治療の研修の機会を提供することが求められます。また、全児協施設間で協力し合いながら、より優れた研修プログラムを整備していくことも必要です。
3.児童青年精神科病棟整備の必要性についての啓発活動
児童青年精神科専門病棟・専用病床を有する医療機関の数は、年々増加していますが、まだこうした医療機関が整備されていない都道府県が数多く存在します。重篤な精神障害を持つ子どもの入院治療が可能な病院の整備は、児童精神科医療の充実のみならず、子どもの精神保健ネットワークの展開や人材育成の観点からも重要です。これまで同様、各都道府県に少なくとも一つは児童青年精神科専門病棟・専用病床を有する医療機関が整備されていくよう、国や地方自治体に働きかけていくことは、全児協の重要なミッションの一つです。
4.関係機関との連携モデルの提示
子どもの情緒や行動の問題は、医療だけで解決するものではありません。現在は、それぞれの加盟施設が、地域の児童青年期診療の基幹となり、教育、福祉、保健ほか関係機関とのネットワークを構築しています。それぞれの施設が工夫していることなどについて情報交換しながら、児童青年精神科領域における連携や精神保健ネットワークのあり方を提示していく必要があります。この点に関しては、厚生労働省の進める「子どもの心の診療ネットワーク事業」ともその理念は共有されており、今後も協力体制を強化していくことが望まれます。
5.就職情報の提供
人材確保の観点からは、例えば、ある加盟施設で研修を終えようとしている若手の医師が、全児協のホームページの人材募集案内を見ることで、スムーズな転職が可能となります。こうした就職情報の提供は、この分野で働く医師を増やすことにもつながります。他の職種でも人事異動などで今までの病院を離れざるを得なくなった時に、他の加盟施設の募集案内を見る機会にもなります。
6.関係団体との連携の強化
児童青年精神科医療の発展のためには、日本児童青年精神医学会をはじめとした関係団体との連携が欠かせません。関係団体との連携を強化することで、診療報酬改定や災害時の支援活動の役割分担、精神保健福祉法の見直しに向けての提言や情報提供など、様々な課題に取り組んでいきます。